コンピュータ将棋の革命

5月2日から4日にかけて第20回世界コンピュータ将棋選手権が行われた。
http://homepage.mac.com/junichi_takada/wcsc20/から結果や棋譜は見てほしい。


将棋のルールくらいはみんな知ってると思う。王様を取れば勝ちだ。言うまでもない。もちろんコンピュータ将棋も相手の王様を取ることを考えてプログラムしてある。


そんな中、目的を間違えてしまった将棋プログラムがある。「稲庭将棋」だ。この稲庭将棋、一次予選は4勝3分の3位で予選突破!!二次予選は1勝6敗2分で予選落ちだったのだが内容がとてつもないのだ。(「井上将棋」というプログラムも同様のコンセプトの様ですが、残念ながら一次予選通過できず)


まぁいきなりどういうプログラムか言っても面白くないのでヒントを出すので想像してほしい。
というわけで以下は徐々に下にスクロールして楽しんでください。わかったら飛ばして結構です。













  • ヒント1 先手だろうが後手だろうが、常に同じ形にする。
  • ヒント2 全ての指し手を1秒で返してくる。
  • ヒント3 狙いは1つ。
  • ヒント4 二次予選唯一の勝利は、この大会の準優勝プログラム「習甦」。(おまけヒント、引分け数は大会中トップタイ)
  • ヒント5 狙い通りに勝利したのは4回、その平均手数は約370手。





さて、おわかりだろうか。
まだわからない人に最終ヒント。この大会は持ち時間が25分、切れたら負け。








もうみなさん分かってくれたでしょう。そう時間切れだけを狙ってるんです(笑) これはコンピュータ将棋の穴をついた見事な作戦でした。
この稲庭将棋は、一切歩を動かしません。将棋したことある人なら誰でも3手も指せば歩を動かすと思います。でも突かないんです。

その代わり、全ての歩に対して2枚のヒモをつけます。つまり簡単には突破できないようにします。
あとはひたすら一人千日手、飛車や金の前後左右に同じ動きを続けます。449手の将棋がありますが、稲庭将棋の陣形は23手目から変わってません。426手、自分の指し手だけとしても213手もの間、何もしません。見たらひどくつまらない将棋ですよ、ほんとに。しかもこれだけ指して消費時間が3分45秒!!!225秒です。1手1秒を延々と続けるんです。棋譜こちら



一次予選ではこの稲庭将棋を破るプログラムはいませんでしたが、二次予選ではそうもいきませんでした。
深く読まれているか、ある程度無理かと思っても突っ込むからでしょうか。


残念ながらこの稲庭将棋は強くなることはありません。来年は少し陣形を変えてくるかもしれませんが、コンセプトは一緒ですから。
しかしこうして、弱点を突かれたときにうまく対応できないといけません。そういう意味では、この稲庭将棋と井上将棋はコンピュータ将棋の発展に貢献したといえるかもしれません。